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空家等対策の推進に関する特別措置法の概要

2025.04.26

「空家等対策特別措置法」の全体像と実務対応:空き家管理・活用の基本法を知る

空き家の放置は、防災・防犯・衛生・景観といった面で地域に悪影響を及ぼします。こうした問題に対応するため、2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)」が施行され、全国の市町村で具体的な対策が進められています。本記事では、空家法の基本的な制度設計と、特定空家等への対応手順、税制・財政支援制度、そして山梨県での対応の参考となる実務視点をまとめます。

1. 空家法とは?―制度誕生の背景と目的

  • 総務省の調査によれば、「その他の空き家」は20年間で約1.9倍に増加
  • 放置空き家が倒壊や景観悪化を引き起こし、自治体が対応困難に

このような状況に対応するため、2015年5月に「空家法」が施行。市町村が中心となり、調査・指導・命令・代執行までを可能とする法律です。

2. 空家法で可能になったこと(実務編)

(1)所有者不明時の調査権限強化

  • 登記簿や固定資産税台帳から所有者を法的に特定できる
  • 市町村職員による立入調査も可能(法第9条)

(2)行政手続の3段階スキーム

段階内容対応義務
助言・指導所有者に改善を促す任意(法的拘束なし)
勧告特定空家等と判断された場合に発動優遇税制除外(住宅用地特例の除外)
命令勧告に従わない場合違反時は50万円以下の過料+代執行

「勧告」を受けると、固定資産税の住宅用地特例が外れ、税額が6倍に増加します。

(3)行政代執行の明文化

  • 所有者が命令に従わない場合、市町村が解体・撤去を代行(法第14条)
  • 略式代執行:所有者不明時も実施可能

3. 空家法で定義される空家・特定空家の違い

【空家等】(法第2条第1項)

  • 年間を通じて使用実績のない住宅・建築物とその敷地
  • 国や自治体が管理するものを除く

【特定空家等】(法第2条第2項)

以下のいずれかに該当するもの

  • 倒壊の恐れがある
  • 衛生上有害(ごみ、不法投棄など)
  • 景観を著しく損なう
  • 周辺環境への影響が大きい

4. 空家法に基づく支援措置と税制制度

(1)固定資産税の優遇措置解除

  • 特定空家に勧告が出された場合
    → 住宅用地特例(1/6課税)が除外
    税額が最大6倍に増加

(2)譲渡所得3000万円控除(特例措置)

  • 相続から3年以内に空き家を解体・売却した場合
    譲渡所得から最大3000万円控除
    ※耐震要件・相続登記完了などの条件あり

(3)自治体による補助制度(例:山梨県)

  • 空き家解体費の一部補助(市町村により異なる)
  • 空き家バンク登録支援、耐震改修補助なども併設

5. 空家法と地方自治体条例の関係

  • 各市町村は独自の「空き家条例」制定が可能(地方自治法第14条)
  • 空家法の枠組みを補完し、除却支援や助成制度などのソフト施策も展開

【例:条例による支援・制限】

自治体主な特徴
東京都足立区老朽家屋解体費用の助成制度あり
京都市活用・適正管理・流通まで条例で包括的管理
山梨県甲府市空き家バンク+相談窓口体制を整備中

6. 空家法の限界と今後の課題

(1)代執行コストと費用回収の困難

  • 解体費用数十〜数百万円が所有者に請求されても回収不能なケース多数
  • 結果的に自治体の財政負担増

(2)所有者の「放置インセンティブ」が強い

  • 特定空家等にならなければ罰則なし
  • 解体・管理コストが高額なため、所有者が放置しがち

7. 実務対応のポイント(法人向け)

  • 「特定空家」になる前に、空き家管理代行や利活用提案を行う
  • 行政への活用提案型の協議・申請を早めに進める
  • 所有者特定には、登記簿・固定資産台帳の照会スキルが不可欠

まとめ

  • 空家法は、調査・指導・命令・代執行の枠組みを整えた空き家対策の基本法
  • 「特定空家等」に認定されると、罰則・税制不利・強制措置が発動
  • 山梨県内でも法に基づく対策と併せて、条例・補助金・バンク活用が重要
  • 空き家の早期管理・流通のため、法人・不動産業者の役割は今後さらに拡大

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